農家の方々にいいぶどうを求めるのであれば、
私たちもいいワインを造らなければいけない。
北海道ワインの醸造技術は、創業時に伝えられたドイツワインの醸造技法を進化させ深化してきたものです。しかし意味もなく得意げに技巧をひけらかすような野暮なことはせず、農家の方々が精魂込めて作られたぶどうの良さを引き出すために粉骨砕身しています。ぶどうの個性を楽しんでいただくことがワインの楽しみのひとつだからです。ただし私たちは日本で一番「日本ワイン」を醸造していることから、北海道を中心に全国からぶどうが一斉に、しかも国内最大規模で届きます。当然ぶどうの特徴が多種多様であることから、一粒一房を大事にするために知識を総動員して知恵を絞り最新の設備も導入しています。ワインは一年に一度のぶどうの収穫期にしか仕込めません。人生に限りがある以上、誰でも数十回しかワインが造れないということです。だからいい加減な仕事など決してできるわけがありません。
受け入れ
秋になると農家の方々は天気予報に目を光らせ、収穫のタイミングを見極めます。そして好機が訪れると大量のぶどうが醸造所に持ち込まれます。最盛期は1日80 トン。生鮮果実で長期保存ができないため、速やかに品種や産地を振り分けて搾汁の段取りをしなくてはいけません。営農部が農家の方々と密に連絡を取りながら、醸造部が阿吽の呼吸で受け入れ作業をします。最新のデジタル技術も導入し、より迅速で的確な作業が可能となりました。また専用タンクで一昼夜ぶどうを寝かせ、皮の中に隠れたぶどうの香りを果汁に引き出す工程を絞る前の段階から行っています。
発酵
ぶどうをプレスした果汁を発酵させ、おいしいワインに仕上げるために、酵母という微生物の力を借ります。北海道の冷涼な気候でもよく働き、ぶどうの良さをしっかり引き出してくれるのはどの酵母なのか、同じぶどうでも2〜3種類の酵母で毎回試行錯誤を繰り返しながら、北海道の個性を生かしたワインを目指していきます。
清澄・ろ過・熟成
北海道の涼しい気候で育ったぶどうは、ワインの魅力のひとつである酸の成分が他の地域より豊富に含まれています。そこでワインになった時の風味を想定しながら酸の量や種類を調整。時には雪に覆われた冬の野外タンクでワインを低温にさらして酸の結晶化を促す工夫も取り入れています。また、私たちは「日本ワイン」にこだわってきたように、もうひとつ変わらぬ矜持があります。それはぶどう本来の風味を味わっていただくために非加熱醸造の「生ワイン」を造ることです。そのために火入れによる加熱殺菌はしていません。デリケートな香味の分子が加熱によって変化するからです。最新鋭ろ過機を導入して守り抜いています。
私たちがワイン造りで大事にしていること。それは、バカ正直と揶揄されようが、よそのことは気にせずに、自分たちのやり方を愚直に貫き通すことです。メーカーが嘘をついてしまったら、いったい何が残るというのでしょうか。偽りは何も生み出しません。お客さまのためにというのは当たり前のこと。加えて、自分たち造り手のためにこの信念だけは曲げることができません。